2006年9月2日、小委員会に対し「球磨川水系河川整備基本方針策定」に関する要望書を提出しました。

2006年9月2日
社会資本整備審議会河川分科会 
河川整備基本方針検討小委員会 
    委員  各位 
子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会
他52団体代表 中島 康
「球磨川水系河川整備基本方針策定」に関する要望書

 2006年9月6日「球磨川水系河川整備基本方針に関する検討小委員会」が開かれますので、それに先立ち、下記の通り意見書を提出します。

 今回の意見書は、第一回の委員会より前回まで各委員会開催に先立ち提出してきた内容と重複する部分もありますが、今まで提出した意見書及び質問書に対して会議の中でも、またそれ以外に於いても、全く審議されていません。これは質問内容が多岐にわたりわかりづらかった為かとも思い、今回はなるべくわかりやすく述べさせていただきます。

1. 基本高水流量の算出方法と計算の前提の変更について

・算出方法の不良点は5月10日及び6月6日の各小委員会前に詳細な資料を提出しておりますが、要は、基本高水流量の検討計算において、住民討論集会での説明と国交省の説明が大きく異なっているという事です。洪水の基準点を八代、人吉の2地点から人吉のみ1地点とし、降雨時間を2日間48時間から12時間に。また計算方法が単位図法から貯留関数法に変更されています。熊本での住民討論集会において、国交省はそれまでの方式の正当性を強調し、住民側から示された計算法等への疑問には耳を貸そうとしませんでした。しかし、降雨時のデータが蓄積され、新しいデータで人吉7000t、八代9000tの基本高水流量値に合わせるには、多くの不都合が生じて来た結果、いままでの基本高水流量の非科学性が明らかになる事を恐れ、今回の前提の変更となったとしか考えられません。
 国交省は今、住民討論集会で説明した基本高水流量の算出方法は誤りであったと認めるべきです。もしそうでないと国交省が言うのであれば、現時点でのデータを用いて工事実施基本計画の策定時と同じ手法で基本高水流量を算出してみせるべきです。

・委員各位におかれては、基本高水流量について科学的に数字で説明する為にもタンクモデルも含めて単位図法、その他の計算方法で算出してみて、もっとも現状に合うものを選定すべきです。ただ国交省の説明にうなずくのみではなく現地住民の納得がいく結果を導き出していただきたいのです。

・安全率はこれで良いのか、ただ1/80を1/100〜1/150にすれば良いとは考えられません。なぜ1/80なのか科学的検討が委員会でなされるべきであり、又それが地元住民に理解される内容のものであってくれることを願います。


2. 国交省の説明する数値について

・素朴な住民感情として河川の安全度の決め方が全く不明です。安全度について住民にどう理解させようとしているのか今までの国交省の説明では判らないことが多すぎます。例えば、天井川とそうでない川について等々、地元住民に理解できる審議を希望します。

・過去の人吉の観測点に於いて、国交省は現況河道流量は4000 t/sとの発表しています。しかし現実には昭和46年(1971)5300 t/s、昭和57年(1982)5500 t/s、平成16年(2004)4300 t/s、平成17年(2005)4300 t/sの水が大きな水害を起こすこともなく流下しています。このことから現況河道流量はどのようにして算出されたのか、極めていい加減なものと感じられ、これがひいては基本高水流量についても極めて疑わしく感じられるのです。

・八代に於いては、国交省の内部資料でも9759 t/sから11539 t/sの水が何の障害もなく流下出来ます。国交省の言う9000 t/sの基本高水流量と現実とはどのような関係にあるのでしょうか。

・人吉に於いて、過去80年間の間の最大流量は5400 t/sであり八代に於いては過去80年間の最大流量は7000 t/sです。人吉において、住民が現状から感じているのは1/80の降雨で起きる洪水は住民側が主張する5500 t/sがより現実的であると感じています。また八代においては現状を補習1/80の大雨に対しても十分に安全であると感じています。国交省のいう基本高水流量はどうしても現状に合わない非科学的なものとしか考えられません。


3. ダム治水では住民の生命財産は守れない

・市房ダムについて
 
 第2回の検討小委員会において、何人かの委員から大雨時の市房ダムの操作はよくやってきたとして人吉市民の間で根強い「市房ダムの放流が水害を大きくした」という疑惑を暗に否定されたと受け取れる発言がありました。市房ダムは48時間雨量775mmを仮定し、計画最大流量1300 t/sその内650 t/sをカットし、650 t/sを放流することになっています。今まで1300 t/sの流入はありません。にもかかわらず昭和46(1971)年8月の大雨時、放水量は最大792 t/s に達し、またこの時、規定の650 t/s を超える放流を約7時間にわたって続けています。又、昭和57(1982)年7月、1019 t/s の流入にもかかわらず764 t/sを放流した記録が有ります。下流の状況によってこれらが水害を拡大させたとの意見を否定することができるのでしょうか。

・市房ダムの治水効果について

 国交省の住民に対する説明では市房ダムの人吉での治水効果は650 t/sカットすることで球磨川の人吉地点での水位を200mm下げることが可能とのこと。今年(2006)人吉において中川原地点での河床に貯まった土砂の撤去が行われ約20000 tの土砂が取り除かれました。今年(2006)と昨年と人吉地点でのピーク流量は4300 t/sでした。しかし中川原での水位は約800mm今年の方が下がっています。市房ダム1基より土砂20000 t浚渫の方が、遙かに効率的と市民は感じています。ご検討ください。

・超過洪水について

 建設省が昭和53年(1978)に行った非常時のダム操作マニュアルによるとダムの水位が洪水調節容量の80%に達したら計画最大放流より多くの放流を開始し、それでも水位が下がらなければ流入量全部を放流することとなっています。つまりこれはダムの治水機能をギブアップするということです。
 ちなみに川辺川ダム計画では最大放流量800 tに対して非常用放水門は5160 t/sが放流されるようになっています。下流がギリギリで洪水を防いでいるところへ5160 tの水が流れ込んだらどのような事が起きるでしょうか。球磨川の過去の洪水では、1755年に1/300、1669年に1/150の洪水が起こったと推定されます。又、市房ダムの側からも計算量以下のダムへの流入であっても洪水調整不能になることはめずらしいことではないと言えます。次の大洪水がダムで制御出来る規模に収まりしかも的確なダムの操作が行われるという保証はないのではないですか。


4.ダムによらない治水対策が治水の王道です

 ダム治水は、全て仮定の積み重ねの上に成り立っています。これは小委員会での基本高水流量の国交省による数字合わせの手法からも分かります。この仮定の下にはじき出された計画以上の洪水には、ダムは洪水防止機能を放棄するより他有りません。防止どころか水害規模の抑制の面でも全く無力するとしか言えません。放水路や堤防のかさ上げ、河道の掘削と浚渫、遊水池の有効活用、山の整備などで洪水対策は流量がいくら増加しても計画内の流量はきちんと下流に流すことができ、洪水規模を最小限にし人の命を救う時間が確保できます。洪水調節をダムに頼るのは危険です。河川工学には素人の率直な感覚です。ダムが出来れば洪水はなくなるというのは「ウソ」ですね。


以 上 



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